みなさん、こんにちは!Lina Momです。
今回は、日本人である私がどのように韓国の大学の薬学部に入学したのかについてご紹介します。
元々、日本の出身大学での専攻が文系だったので韓国で理系学部に転身すること自体も珍しいことかと思います。
専門職につながる学部は特殊なので細かくご紹介していきます。
文系学位を日本で、理系学位を韓国で取得出来たことは本当に感謝です。
まずは韓国の大学の薬学部入学システムはどうなっているかについてご紹介します。※2021.1月時点
薬学専門大学院(약학전문대학원) 2+4 制度
日本でも10年ほど前に薬学部が4年制から6年制に変わりましたよね。ちょうど私が高校卒業する時期だったので記憶に残っています。
韓国でも2006年の高等教育法施行令改定に伴い、2009年から薬学部(약학대학)が4年制から6年制に変わりました。(日本の学部入学とは少し異なり、アメリカの教育過程を真似た印象です。)
これにより2009学年度(入学年度が2009年度の意)から薬学を専攻しようとする学生たちは、
基本的に他の大学,学科などで2年間基礎的な教育科目(日本の大学でいう一般教養科目)を履修した後にPEETという試験を受験し、
更に、希望する大学の志願資格を満たせば薬学大学(약학대학)の3年生に編入できるというシステムになりました。
これを「2+4制度」と言います。
つまり3年生から編入して6年生までの4年間学ぶということですね。この4年間を学ぶことになる所が薬学専門大学院(通称약전, 약대)というところになります。
名前を聞くと大学院ですが、取得できるのは薬学士の学位(학사 학위)です。
このような制度のため韓国では「薬学部入学(약학대학 입학)」よりも、「薬大編入(약대 편입)」と言うのが今のところ一般的です。
今現在(2021年)は薬学専門大学院制度ですが、2022学年以降は「2+4制度」もしくはPEETを受けない以前の学部6年制を大学側が選ぶことができるように変わりました。
学部6年制に戻ると、以前のように高校3年生でスヌン試験(수능시험/日本でいう大学入学共通テスト)を受けてその成績で志願する必要があります。
薬学部のように、医学専門大学院(의학전문재학원,의전)や歯学専門大学院(치학전문대학원,치전)も同じ制度が導入されていましたが、ほとんど学部制度に戻っている雰囲気です。(医学専門大学院として残るのはCHA医科大学の医学専門大学院のみになる可能性が高くなりました。)
アメリカの場合「2+4」以外に「0+6」などもあるとアメリカ薬剤師の友人から聞きましたが、アメリカのPharm.Dという学位はまた別になり、渡米後に規定科目の履修と実習時間の充足が条件だそうです。
しかし現在全国に37か所ある薬学部のうちのほとんどが、2022学年度以降に学部6年制に戻すことを選択したようで、薬学部に途中から編入できるのも2021年学年度の入学がほぼ最後になりそうです。
2023年度までは現在の「2+4制度」と学部6年制が並行される予定になっています。
ちょうど私はこの「2+4制度」が始まって2年目(2012年学年度)に編入しましたので、2011年学年度入学の先輩たちがこの過程の1期生でした。
同じ大学でも華僑の方や朝鮮族の方などはいましたが日本人は私のみでした。
今のところ全国の他大学の薬学専門大学院に日本人が編入したという噂を耳にしたことがないので(在学生も卒業生もネットワークがあり、学生に関する情報が割とすぐに入ってきます)、
このまま制度が廃止されることになると将来的に私は化石のような存在になるかも?と少し期待しています(笑)
次にPEETについて簡単にご紹介します。
PEETの概要
韓国で薬学部に編入しようとする場合、まずはPEETと呼ばれる試験を受験する必要がありますよね。
次にこの試験が一体どういう試験なのかについてご紹介します。
3領域から成っており、化学(一般化学・有機化学)と生物、物理の計4科目となります。
時間割と配点は以下の通りです。各科目ごとに100点満点となり、4科目で400点満点です。
具体的な出題内容は写真を引用しておきます。
高等教育法第2条による大学2年生以上の過程を修了した者または修了予定者であれば受験することができ、海外大学出身者も書類を揃えれば認められます。
私は日本で4年制大学を卒業していたので受験資格はありましたがPEETは受けませんでした。(下で詳しく説明します。)
試験自体は8月半ばに、全国6地域(ソウル・釜山・大邱・光州・大田・全州)で実施されます。
一人で学ぶのはほぼ無理なので専門予備校に通うのが一般的です。
大手の予備校がいくつかあり、私もmega MD(메가엠디)という予備校にお世話になりました。
外国人枠で出願した私はPEETが必須ではなかったため受験はしませんでしたが、入学前と入学後にも予備校のオンライン授業を受講していました。
大学によってこの試験が必須でないところがあります。
なぜ受けない道を選んだのかというと韓国人の志願者たちと同じ土俵に立てば負けることは確実だったからです。
PEETに日本語バージョンがあったとしても文系出身の私にはまず難しいですし、下手に低い点数を出してその成績を提出しわざわざ低い評価を受けるよりも、出す必要がないのであれば出さない方が有利だと考えました。
そのため外国人枠でPEETの成績が必須でない大学から選ぶ必要がありました。韓国人はもちろん全員この受験が必須となります。
入学前の準備事項
専修科目単位
薬学部編入の出願の前にもう一つ、必ず取得していなくてはならない単位というものがあります。
これは大学毎によって異なるため、各大学の募集要項に詳しく記載されています。目指す大学の募集要項を前年度からチェックしておき、履修漏れがないよう注意する必要がありました。
編入前に他の大学の学部(他学部)で2年間修了する必要があるため、一番若い同期はちょうど他大で2年生を終えて編入してきていました。
薬学部を元々志願して他大学で2年間を送る子達は、薬学部編入に有利な学科を選択し、専修科目もその間に履修しておくという感じでした。
既に大学を卒業している私のような文系出身者で専修科目の履修がない人は、専修単位を何らかの形で取得する必要があります。
実際に私の入学した大学は編入願書提出時に、数学系科目の履修単位(単位取得予定)が最低限1科目以上必須でした。
編入試験を受ける前にそれを知ったので、その単位のみを取得するため光州にある4年制大学の2学期から新入生として入学をし、「線形代数学」という科目を履修しました。
(日本で文系学部だったため、求められる理系科目の単位を持ち合わせていませんでした。)
文系出身者は単位銀行制(학점은행제)という、必要な単位だけを特定機関で取得することのできる制度を利用する人が多かったです。
公認英語の資格と韓国語の資格
英語
公認英語の成績も必須です。
だいたいTOEICやTEPSなどの資格(点数)が必要で、こちらも大学によって認められない英語の試験などがあるため入試要項を確認する必要があります。
文系学部出身の編入希望生の場合は英語の成績がほぼ満点に近かった印象です。
文系なので元々得意というのも理由の一つにはなると思いますが、それとは別に重要なポイントがあるので下でご説明します。
韓国の薬学部はテキストが英語だったり、先生配布の資料が英語、テストも英語という科目がありました。
英語のリーディング能力さえあれば何とかなりますが、専門用語で学習するので楽ではありませんでした。
私の場合は英語も韓国語も外国語になるため、一つの用語を2ヵ国語で覚えていく必要があり、この点でも韓国人の学生と比べると大変だったかもしれません。
覚えることが多すぎて、覚えるという感覚を超越した?感覚が生まれていました。
目に焼き付けて一時的に記憶するようなことを、「눈에 바르다(目に塗る)」という表現を使うのですが、この方法で乗り切ることが多々ありました。
見慣れてくると、意味を調べなくても専門用語の英語も韓国語も何となく意味が分かってくるという経験をしました。
韓国語
韓国語の資格に関してはTOPIKのみが認められていました。
私が願書を出す時点で4級以上が条件となっていましたが、正直4級のレベルでは大学の講義についていくことはできません。
私は出願時の2012年で2度目の6級を取得していましたがあまり意味がなく、大学での講義は大変でした。
聞き取りは出来ても内容が難しい&量が膨大なので、録音と先生の口頭説明を書き写す作業で授業が終わるという日々でした。
授業後に帰宅して一つの科目の復習に取りかかっても、その日学習した内容で出てきた英語と韓国語の単語の意味調べが半分くらいしか終わらない….というかなり悲惨な日々でした。
実験レポートや発表、病院や製薬会社、薬局実習なども韓国語でこなさなくてはいけません。
単位を一つでも落とすと即留年決定で一年を棒にふることになります。(1年通年カリキュラムのため)
実際の入試採点方式 (1段階と2段階)
一つ例として、カチョン大学(가천대)という大学の2019年度入試要項にある採点方式を見てみます。
1段階での選考要素は、
PEET の成績、GPA(前籍大学の成績)、公認英語の点数と書類(自己紹介や志望動機)になります。
こちらの大学では各項目が200点として計算されています。PEETは400点満点のため200点満点にして換算されます。
1段階の満点は800点ですが、書類の項目に関しては数値化することが困難なため、実質600点満点として総合点が算出されます。
先ほど文系出身者は英語の点数が満点に近いとお話したのですが、ここに理由があります。
PEETの場合は4科目が結局200点に換算されてしまう割には難易度も高く理系出身者のほうが有利であることが多いため、同じ200点満点ならば英語に投資をしたほうが時間効率的にも有利だからです。
色々と戦略はありますが、ここでは省略します。
次は2段階です。1段階でパスした者のみが次の段階に進めます。2段階では、1段階の点数と面接試験の合計で点数が出されます。
面接も大学により異なりますが、私が受けた時は2種類の面接(인성면접,지성면접)が行われました。
外国人枠でしたが、特別扱いはなく韓国人の出願者と共に面接を受けました。
人格についてみる面接(인성면접)は、志望動機を中心に質問されました。学長と教授2名の面接官に対し、面接者は私を含め3名でした。
知識を問う面接(지성면접)では、「生物」と「化学」と書かれたボックスの中からくじ引きのように一枚ずつ問題が書かれた紙を引き、好きな方を選んで答えるというものでした。
化学の質問は覚えていないのですが、生物の質問は「遺伝子変異について説明せよ。変異した場合のメリットとデメリットを具体例を挙げて説明せよ。」でした!
よく答えられたなーと自分も驚きましたが面接官の教授2名も驚いておられる様子でした。
面接で聞かれそうな質問に関してはかなり事前調査しており、答えを考えずに言えるほど丸暗記して臨んだおかげで功を奏した感じです。
準備したとものと全く同じ質問ではなかったですが、応用すれば良かったので、運が味方してくれたと思います。
火事場の馬鹿力ですね。今なら無理だと思います(笑)
合格通知は韓国らしく確かケータイのメッセージでも送られてきていました。オンラインで確認したら合格の横に「授業料振込用紙」と書かれています。
最後に
そんなこんなでなんとか合格にこぎつけましたが、喜びはつかの間。これは始まりに過ぎませんでした。
地獄への入り口(大げさ)の前に立たされたというわけですか(笑)
私が受験した年度の母校の競争率は10~15倍で、全国でも人気度3位にランキングしていました。入学後に聞いて驚きました。
薬剤師として働くことのできるVISAや進路別のお仕事内容などについてはまた別の記事でご紹介します。
読んでくださりありがとうございました。
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