こんな風に思った経験がある方いらっしゃいませんか?
「これあっちの薬局の方がもうちょっと安かった気がするけど…」
韓国の薬局でお薬を買うときに薬局ごとに価格が違うけど…でも同じ時もあるし…どういうこと?
今回は韓国お薬事情の一つをご紹介します。お薬の金額のことってなかなか聞く機会ないですよね!この機会にぜひ知って頂ければと思います。
薬剤費の内訳
一般医薬品と専門医薬品
まず韓国の薬局で購入できるお薬には2種類あります。
薬を購入するために処方箋が必要な専門医薬品と、処方箋なしでいつでもお薬を購入することができる一般医薬品の2つです。
コンビニなどで購入できる安全常備医薬品もこの一般医薬品に入りますね。(安全常備医薬品については過去の記事を参考にしてみてください。)
場所によって価格が異なるお薬がまさにこの一般医薬品になります。
これは「医薬品販売者価格表示制(의약품판매자 가격표시제)」という制度によるもので、1999年に保健福祉部(日本でいう厚生労働省のような行政機関)が医薬品の価格策定の自律化を保障し、競争による価格の引き下げを誘導するため導入されました。
薬局に行くと一般医薬品やその他医薬外品などに金額シールが貼られてあるのをご覧になったことがある方もいらっしゃるかもしれません。
薬局が医薬品卸売会社から仕入れる一般医薬品や医薬外品などは仕入れ値に少しマージンを上乗せて販売しています。
これは他の小売業と同じですね。しかし上で説明した制度のため、どこの薬局に行ってもこれらの価格にはそこまで大差がない印象です。
一方で処方医薬品(専門医薬品と一部の一般医薬品)は、安全性や有効性が保障されなくてはいけないという特性があります。
そのため単純な市場原理を適用することができません。そこで施行されているのが「国民健康保険制度」になります。
薬剤費の内訳
まずここで実際に薬を購入した際にもらう領収証(薬剤費計算書・領収証/약제비계산서・영수증)を見てみましょう。
領収証に書かれている項目が多くて、「何これ?」となり、詳しく見る気すらしないという方もいらっしゃるかもしれません。
はい、10年前の私がそうでした。この記事を読み終わる頃にはだいたい分かっていただけるであろうことを祈り、先に進めます!
ここでまず初めにいくつか用語についてご説明します。
簡単に言うと、本人負担金は自分が実際に支払う金額、給與は保険適用される部分のサービスや物の金額、非給與は保険適用されない部分のサービスや物の金額ということです。
実際に処方医薬品を購入する際に、薬局で私たちが支払う金額は簡単に分けるとこうなっています。
本人負担金(본인부담금) + 全額本人負担(전액본인부담) , 非給與(비급여)
上の領収証やレシートの薬剤費総額(약제비 총액)を見ると、
本人負担金(본인부담금) + 非給與(비급여), 全額本人負担(전액본인부담) + 保険者負担金(보험자부담금)
となっていますが、この保険者負担金というものが国民健康保険公団または国が負担してくれている金額ということです。
※この非給與(비급여)と全額本人負担(전액본인부담)の違いについてはまた続編で説明します。
本人負担金と給與
私たちが負担することになるのが、患者本人負担金と保険適用されない部分の金額(非給與,全額本人負担)になるということが上の説明でお分かりいただけたと思います。
ここでさらに細かく、本人負担金が一体どういうもので構成されているのか?を見ていきます。
私たちが病院に行き何かしらお薬等での治療が必要だと判断された場合、処方箋が2部発行されます。
1部は患者保管用、そしてもう1部は薬局提出用(薬局で保管しておくもの)になります。
この処方箋に基づいて調剤され、患者さんに提供されるお薬の事を処方医薬品(処方薬)と言います。
処方医薬品(処方薬とも言う/처방약)にはすべての専門医薬品と、一部処方された一般医薬品が含まれます。
処方医薬品の価格には薬剤師が医薬品を販売する際に提供されるサービス料も含まれていますが、薬剤師が提供する相談サービス5項目とは一体何でしょう?
調剤料(조제료), 調剤基本料(조제기본료), 服薬指導料(복약지도료), 管理料(관리비), 薬局管理料(약국관리료)
これら5つの項目によって構成されているのが薬剤師相談サービス料です。上の領収証左側の赤い丸の中がこちらに該当します。
健康保険で保障(カバー)されている医薬品(処方薬)の場合、卸売、小売の過程で薬局に残る利益(マージン)はゼロです。
つまり、薬剤師相談サービス料と純粋な薬品費により私たちが支払う薬の値段が決まるということですね。
薬を購入する際に支払う金額(本人負担金/본인부담금)は、純薬品費と薬剤師の調剤サービスに該当する費用の一部になります。
そして患者さん本人が支払った金額の残りに該当する部分(給與/급여)は国(健康保険公団/건강보험공단)が負担しているということになります。
では本人は何%負担し、国は何%負担してくれるのでしょう?それが、本人負担率(本人負担の割合)というものです。
本人負担額の割合
上の方でお話したように、実際の薬剤費の総額は、本人負担金+非給與,全額本人負担+保険者負担金の3つになりますが、
保険者負担金は、国民健康保険公団が代わりに(薬局に)お金を支払ってくれるため、患者さんは健康保険によりその部分が免除されるということでした。
そして実際に患者さんが負担する割合を本人負担率というのですが、それについては下に表を載せておきます。
処方調剤は65歳を基準に分かれています。65歳未満の方は薬剤費総額(약제비)の30%が自己負担額となります。65歳以上で薬剤費総額が1万ウォン以下の場合は1,000ウォンだけ支払えばOKです。
医療給與(의료급여)対象者は、処方調剤の場合だと500ウォンのみ支払えばよいことになっています。
医療給與(의료급여)対象者には表のように1種と2種がありますが、簡単に説明すると国民基礎生活保障受給者(日本でいう生活保護)や脱北者そして身障者などが対象になります。
あとは차상위(次上位) 본인부담경감대상자 지원사업というものもあり、これに該当する方も処方調剤の薬剤費は500ウォンとなっています。
※次上位階層というのは、生活保護を受けられない人で、所得認定額の最低生計費の100分の120未満である貧困集団のことを指します。
では、記事の初めの方に出てきた薬剤費領収証をもう一度見てみましょう。
右のレシートの赤い枠の一番上が、薬剤費総額(1+2+3)です。53,970ウォンとなっていますね。
これの30%にあたる16,100ウォンが本人負担金(1)、つまり薬局で支払う金額であることが分かります。
保険者負担金(2)が残りの分に該当する37,870ウォンとなり加入者の代わりに国民健康保険公団が(薬局に)支払っているというわけです。
いかがでしょう?分かって頂けたでしょうか?
薬にも割増料金がある?(夜間調剤割増制度)
タクシーでも深夜割増などの料金が付加されるように、お薬にも割増料が存在します。
- 平日午後6時以降から翌日の午前9時まで
- 土曜の午後1時から翌日午前9時まで
- 日曜と祝日は終日
この時間は、患者さんが負担するお薬の値段が上がります。
患者さんの保健医療サービスの便宜性のために週末や夜間の遅い時間まで薬局を運営する時間が増えたので、薬局勤務者にインセンティブを付与するための割増料になります。
いくら上がるのかというと、具体的には薬剤師相談サービス料のうち調剤料が30%割増になります。
以前私がアルバイトをしていた薬局でもこんなことがありました。
いつもお昼に来られる男性の患者さんが、その日はたまたま午後6時過ぎに薬局に来られて、いつもと同じ処方(同じお薬)だったので当然ご本人もいつもと同じ金額だと思い払おうとしたところ
「いつもと同じ薬なのに若干高くなってるけど、どういうこと?」と驚かれていました。
遅くまでお仕事をしていて病院や薬局に行くのが6時以降になってしまう人にとっては薬局の夜間営業はありがたいことですね。
時間に余裕があれば、消費者としては割増料が付加される時間は避けたいですね。
最後に
専門的な内容で難しい!と思われた方も多いかもしれません。薬のお値段などは普段聞く機会がほとんどないと思いますので少しでも興味を持っていただけると嬉しいです。
比較的身近に感じる情報などもあったかと思いますので、在韓の方やこれから渡韓される方はぜひ参考にしていただければ幸いです!
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